箱根

先日、箱根に行ってきた。ゆっくり観光となると、今回は初めてになるかもしれない。小さいころ、強羅に行った記憶はあるものの、明確ではない。大学1年のときは、国道1号線を歩くのが精一杯で、景色とかほとんどおぼえていない。
 
旅程
1日目:芦ノ湖箱根神社・関所跡・石仏群
2日目:ポーラ美術館
 
今回は、愛車のセリカを駆使して箱根に向かった。私が住んでいるところからだと、箱根に車でいくのは難しいものがある。一つ目は、首都高経由東名・御殿場ルート。二つ目は、16号経由小田原厚木道路ルート。首都高経由だと、戸田→池袋の5号線から新宿・渋谷が最短距離だが、護国寺あたりから渋谷まで慢性的な渋滞でちっとも進まない。距離だと20キロぐらいだが、1時間ぐらいかかる。東名は空いているから問題ない。首都高の渋滞を我慢できるかどうかがカギになる。16号経由の場合、16号に出るまでに17号で大宮経由、川越から254号で16号に入るルート、東松山から407号で入間で16号に出るルートの3つがある。時間からすると、407号を使用するのが楽だ。ただ、入間まで1時間弱かかる。16号に入っても、一般国道だから、厚木まで相当かかる。三つ目のルートもあるにはあるが、それは二つ目のルートに近い。圏央道を使うパターンだ。東松山鶴ヶ島関越自動車道圏央道にのる。だが、圏央道は八王子のはずれの日の出までしか伸びていないので、八王子からは16号を利用するしかない。ということで、首都高の渋滞さえ我慢すれば時間的なロスは少ないだろう、ということで、一つ目のルートを選択した。
 
御殿場からは138号線で山を越える。乙女峠を越えると、仙石原というところになる。ここを道なりにいけば、強羅や箱根湯本にいく。左折すると芦ノ湖に向かう。今回は芦ノ湖湖畔をドライブするルートをとったので、左折することにした。
 
しばらくすると、芦ノ湖が見え、芦ノ湖を縦断する遊覧船の発着所につく。10時ごろだったので、ひともまばらだ。ここで遊覧船にのると、富士山をバックに関所跡まで70分の遊覧ができる。今回は乗らずに、さらに関所方面に向かった。
 
遊覧船乗り場からしばらくいくと、箱根神社がある。箱根神社は、山と湖が一直線に結ばれている。本社から下をみると、湖畔が見える。午前中だと太陽の位置関係から、湖に太陽光が射して湖面がきらめき、参拝路の木陰の暗さとで、絶妙な空間を作り出す。いつまでも飽きがこない、ずっと眺めていたいような気分にさせる。
 
箱根の関所跡につくと、そのとなりは恩賜公園となっている。公園は一つの山(丘?)になっていて、散策することができる。その頂上には、旧函根離宮があったが、行った日はたまたま休館日で入れなかった。頂上からは、富士山と芦ノ湖や周りを囲む箱根外輪山が見え、絶景だった。桜が植林されているので、春にいくと桜の中に富士山が見える、という景色が堪能できるかもしれない。今の時期でも、紅葉が終わり、葉が落ちた山々のなかに、雪化粧の富士山が見え、冬の神々しさもあるから、捨てたものではない。中央広場から展望台を経て、湖畔のすぐわきを散策できる湖畔路があるので、そこを歩いた。道はあまり整備されていないが、右手に富士山と芦ノ湖を眺めつつ、木陰の中を歩くのも気持ちよかった。勾配が激しいが、景色は素晴らしいので散策しがいがある。湖畔路を半周すると、関所にいきつく。行ったときは箱根の関所を復元する工事が進行中であり、平成16年に完成するという。ただ、当時の情景が偲ばれる資料館があり、なかなか興味深いものがあった。復元工事が完成すれば、より当時のイメージがしやすくなるのではないか。
 
公園の駐車場でしばし休憩したのち、宿へ向かった。芦之湯の松坂屋本店という老舗旅館に宿泊した。時間が早かったので、チェックインしたのち、芦之湯周辺を散策することにした。宿から10分くらい歩くと、元箱根石仏・石塔群がある。山の岩場に仏が何体もほってあり、石塔もいくつかある。これらの制作時期は鎌倉時代という。『曽我物語』で有名な曽我兄弟の墓、源頼朝の先祖にあたる多田満仲清和源氏の祖・源経基の子)の墓、八百比丘尼の墓もある。巨大な磨崖仏で、鎌倉時代に彫られた六道地蔵の存在感は圧倒的だ。これらは、国道1号線をはさんだ両側にあり、地下道で結ばれている。近くに精進湖がある。ここは湖面が氷で覆われ、周辺のものがなしい雰囲気をいっそう大きいものにしていた。冬の時期、夕暮れ時にいったからかもしれないが、「地獄」と称されるこの一帯にどこかものものしい雰囲気を感じざるをえなかった。
 
今回の宿は創業300年という老舗旅館。松坂屋本店という。芦之湯という温泉地帯にある。国道1号線沿いにあり、元箱根石仏・石塔群の近くにある。閑静な地域で、滞在するにはもってこいの環境だ。部屋のランクもいくつかあり、著名人が宿泊するのは離れである。正門をくぐると、右手に庭園があり、その奥が離れになる。われわれが宿泊したのは一般向けだが部屋に温泉がでる部屋。庭園に面し、庭園をぐるっと回れる。温泉の温度も適温で、長風呂できる。料理も手ごろでほどよい。環境だけでなく、創業300年にふさわしく、歴史もあるようだ。目に付くのが西郷隆盛木戸孝允が会見したという石碑。現皇太子殿下が学生のころ宿泊したという記録。元中曽根康弘首相も宿泊したという記録もある。離れがあるので、宿泊しやすいのだろう。
 
箱根=温泉というイメージが強いが、「地獄」の芦之湯周辺、関所のある元箱根周辺をつぶさに見ていくと、箱根の厳しさを実感してしまう。四方を山に囲まれ、天下の峻険として名をとどろかせてきた。温泉=陽とすれば、箱根が歴史の中で演じてきたのは陰であろう。温泉だけなら、年間2000万人もの人々が足をはこばないだろう。もちろん、富士山や芦ノ湖だけでも同様だろう。日本の歴史の中で箱根が担ってきたものも多くの人々を魅了するのだろう。歴史、自然、温泉の三つが一体となる場所だからこそ、内外を問わず多くの人々が来訪すると思う。