コンフェデ杯 レビュー

フランスの優勝で終わったこの大会も結果的には有意義であったようだ。欧州の各リーグが終って間もないこの時期に行われる大会はいろいろ物議を醸し出しているが、使いようによっては利用価値が高そうだ。
 
カメルーンのフォエ選手が試合中に倒れ、そのまま冥界入りしたことは非常に残念でならないし、今後このようなことが起こってはならないだろう。ただ、フォエ選手の事故がコンフェデに原因があるのかは分からないので、安易にこの大会の意義を失ってはならないだろう。
 
どのような点が有意義であったのだろうか。一つはワールドカップの翌年に行われたという点である。ワールドカップの1年後はある意味重要な年であろう。というのも、ワールドカップで一段落つき、チームの体制が変化することや、次のワールドカップ予選が開始するまで2,3年であり、各大陸選手権の前年であることが多い。すなわち、この大会で次のワールドカップまでになにをすべきか、という課題を見出すことができる。この大会は大陸王者が出場するわけであるから、自国の位置を測るのにもってこいだ。たとえ、この大会で良い成績があげられなくても、まだ1,2年ある。いかようにもできる時間はある。
 
第一の点と連動するが、若手を試す機会である。事実、フランス、トルコは先のワールドカップのメンバーから大幅に選手を入れ替えた。選手が所属するリーグが終了していない、あるいは終了間もないということもあろうが、次の大会を視野に入れた選手起用が行われた。フランスは短期決戦ということ、若手に経験を積ませるという意味からターンオーバー制をひいた。チームの骨格はレギュラークラスの選手を配し、チームのバランスを崩さず、若手の経験値をあげることに成功した。トルコも同様の展開をみせた。間近に控えるユーロ2004へ向け、タイトルをかけた大会で若手の経験値を上げたことは大きい。なによりも選手層が厚くなる。また、レギュラー陣にも競争を与えることでさらなる飛躍が期待できる。コロンビアやブラジルもしかり。今年の後半から始まるワールドカップ南米予選に向けて経験を積むことができる大会だった。ブラジルはやや失敗に終わったと思われるが(予選リーグ突破できなかったから)、ヨーロッパで活躍する選手が入れば違うだろう。ただ、若手で結果を残せなかったことは不本意であっただろう。
 
日本は予選リーグを突破することができなかった。列強相手に好勝負したが、いかんせん運がなかった。どの試合においてもボールを支配し、流れを引き寄せることができたが、最後で運に突き放された感も強い。あと一歩の部分で決めることができない。この部分が列強との差であろう。その差をどのように埋めるのか。それは実戦あるのみだろう。厳しい試合をつうじて身につけるものだ。アウェーで強国と戦うことで経験をつむことができる。今回はその経験を積むという目的は、2試合少なかったが、達成されただろう。
 
チームのバランスもよくなってきている。選手交代などの采配でジーコを批判する動きもあるが、これも微妙なところだろう。6月は強化月間であったが、SARSの影響で予定通りスケジュールがこなせなかった。そのため、さまざまな選手を試し、コンビネーションを図ることができなかった。好調のチームはいじらないという作戦が今回は裏目に出たが、さまざまなマイナス要因を抱えていたことからこれは仕方がないところかもしれない。ただ、レギュラーと控えを完全に分けていたことはいささか問題があるように思われる。コロンビア戦が良い例だろう。中田浩も小笠原もなにもできなかった。個々の能力に頼ったチームづくりの弊害が見えたような気がする。約束事を作らないのがジーコの方針であるとするなら、フランス戦とコロンビア戦との内容の格差があっても仕方がないところだろう。だが、監督が意図する戦略が明らかならば、多少の個々の能力差を埋めることができる。コンビネーションという観点からすれば、これは実戦をつむか、合宿をするしかない。それをしないとすれば(ジーコは合宿をしないと述べている)、選手それぞれが候補になる選手のプレーをどれだけ把握できるかにかかっている。だが、選手個々のイメージができても、それをチームとしてのイメージの共有を図るには実戦だけではおぼつかない。チーム全体のイメージの共有化をしなければ、実戦での経験もその場限りの経験でしかなくなるだろう。このイメージの共有化はこの大会を通じてやや図られたように思われる。ジーコとすれば、東アジア選手権でこのレベルにまで達し、コンフェデでは選手間のイメージの格差を少しでもなくして結果を求める、というプランがあったかもしれない。内容よりも結果を問われる日韓戦や前回から間もないアルゼンチン、というテストには向いていない試合があったことも原因かもしれない。ただ、タイムリミットは決まっている。スケジュールの変更は大いなる痛手かもしれないが、それを乗り越えるだけのものがジーコには求められている。あと2年しかない、と考えたほうがよさそうだ。