U−22日本対U−22コスタリカ 観戦記

この試合の目的は5月初頭に行なわれる五輪二次予選を迎えるに当たってのチェックであったはずだ。この試合については厳しい評価を下したい。というのも、不安を覚えるところがいくつかあるからだ。
一つのポイントはメンバー構成にある。今回、ボランチの位置には阿部と森崎和が入ったが、この二人は攻撃的な選手である。ということは、実質的に守備を担う選手がディフェンスラインの3人に過ぎない。中盤を支配し、試合の主導権を常に握れるのであれば、この構成であっても多少のピンチはまぬがれよう。しかしながら、今回の試合や最終予選、さらには五輪においては、守備に対する不安は大きい。中盤の底で精力的に守備をこなし、機をみては攻撃参加する、という選手がフィールドにいることが重要だ。すなわち、チームの実力が相手よりも、同等、あるいは、格上である場合はボランチの位置に守備的な選手を置くことで、DFの守備的負担を軽減させ、ひいてはカウンターによる失点の回避につながるのである。そういった意味では、コスタリカ疲労からくるスタミナ減になる後半よりも、前半に鈴木啓太を起用し、守備でのコンビネーションを図ることが重要であったし、コスタリカ疲労が見え始める後半に攻撃を意識した中盤の構成をとることこそがテストマッチの意味合いが大きかったのではないだろうか。

二つ目は攻撃についてである。このチームの前線は、事実上、中山、大久保、松井の3トップであろう。中山が中央でポストプレーを狙い、大久保がスピードを生かし、松井はテクニックで攻撃のリズムを作る。おそらく今後もこの布陣がベースとなるであろう。すると、攻撃の起点はいくつか考えられる。左に張る松井、右からクロスを入れる石川、中央で攻撃の舵取りをする阿部。これら3選手を起点とし、FWの二人を含めた5人が攻撃を形成するのがこのチームの特色であろう。しかしながら、この試合でこの5人の有機的な攻撃はあまりみられなかったように思われる。その原因は、クロスの精度であり、中山をターゲットとした動きがみられなかったことである。他方、選手起用もその原因の一角を担っているように思う。阿部と森崎和の場合、両選手とも攻撃であるから、両選手とも守備と攻撃を意識し、中途半端になってしまう。阿部と啓太の場合なら、啓太が守備を重点的に担うため、阿部が攻撃に重点を置くことができる。得点が阿部のフリーキックのみという結果と、アジア大会で準優勝を得たときのフォーメーションを考えれば、阿部と啓太の組み合わせが現状では最良の結果を残していることは明白だ。
 
今回は、啓太が直前に軽度のケガをしたための緊急処置であったかもしれないが、それだからこそ、逆にメンバー選出の際に守備的MFをもう一人入れるべきではなかったか。今回の失点も守備のミスであった。経験不足からくるものであろうが、集中力を切らさないことが失点を未然に防ぐことができる。五輪の最終予選は短期間に試合が組まれているために、一つのミスからくる失点はチームの流れに影響する。これらの意味からすれば、今回は良きテストマッチではなかったか。