MIHO MUSEUM

京都駅から約1時間強、電車とバスを乗り継ぎ、山道を登っていく。行った時期は5月だが、山の春は遅く、新緑の中にも桜の花がちらほら見える。
 
バス停からおよそ3分くらい歩くと、きれいな建物がみえる。この建物はインフォメーションセンターになっており、食堂やおみやげが販売されている。食堂のメニューは「自然農法」という方法でつくられたそばやうどんがある。また、パンもある。
「自然農法」というのは無肥料、無農薬で作る方法だそうだ。そこから約5分ぐらい山道を歩く。この道はトンネルになっており、微光が神妙なムードを作り出している。
 
トンネルを抜けるとそこは現世と隔離されたような感覚に陥る。太陽の光がさんさんとふりそそぎ、山の中に作られた美術館が現れる。本当に美術館が山の中にすっぽり入っているのだが、まったく違和感がない。
 
美術館に入ると、ライムストーンで壁が構成され、暖かなぬくもりが感じられた。美術館は北館と南館で、北館は日本、南館は海外の美術品で構成されている。
 
今回は、北館で「耀変天目」が展示されており、それを見たいがためにここを訪問した。耀変天目は4月に国立博物館で開催された国宝展で初めて目にしたが、ここでも展示されるということを聞いたためだ。国宝展で耀変天目に出会わなければここには来ていないだろう。現在耀変天目はわが国には3点しかなく、その3点とも国宝の認定を受けている。この美術館が所蔵している耀変天目は第4の耀変天目とされている。ただ、ここの耀変天目と他の3つの耀変天目の違いは、茶器の外側である。国宝に指定されている3つの耀変天目は外側には普通の釉薬で模様はなにもない。しかし、MIHOの耀変天目は内側と外側が同じデザインとなっており、稀に見る美しさをかもしだしている。耀変天目は焼く段階での突然変異によって独特の模様を描いているが、内側だけでなく外側もそうであるとまさに神業である。展示方法も思わず手に取りたくなるようであり、見る者を十分楽しませるようになっていた。
 
南館には海外の芸術品が展示されているが、おおよそ古代に集中している。行った時は中国の古代品も展示されており、興味深い内容だった。海外でも所蔵コレクションの展覧会が行われており、作品も一級品ばかりである。
美術品だけでなく、建物自体も美術品といえるくらいの出来である。自然に逆らわず自然にとけこんでいる美術館はみたことがない(というか、それほどあっちこっち行っていないが)。