最終節を終えて

11月29日のJリーグ最終節を中心にセカンドステージを振りかえってみたいと思う。

11月29日はあいにくの天気で、チケットが前売りで完売したとはいえ、出足は悪いと思っていた。雨で5万人を超えるとは。いま東アジア選手権が行なわれているが、日本代表でもそうお目にかからないだろう。雨で5万人を超えるという背景には、(1)最終節であること、(2)ナビスコカップで優勝したこと、があるかもしれない。埼玉スタジアムで前売り完売はあまりないことで、セカンドステージの成績が表れていると思う。第12節の東京V戦の時点で首位にたっており、優勝の可能性が高かったこともあるだろう。第13節、第14節で足踏みしたものの、レッズがこの1年見せてきたパフォーマンスの裏返しだと思う。私の場合は、埼玉スタジアムは事前にセット券という形でチケットを発売しており、それを利用していたから、レッズの成績がどうであろうと、行くことは決まっていた。

当所の目論見では、レッズが優勝を決める試合と思っていたが(これはまったく私見だ)、逆に鹿島が優勝をかけた試合となってしまった。レッズは過去数回目の前で優勝を決められるという悪夢を繰り返しており、鹿島のよろこぶ姿を決して望んではいないことを示す試合となった。鹿島はナビスコカップで苦杯(4−0だ!)をなめ、再度負けを受け入れることを望まないことは明らかだった。鹿島は鹿島なりのプライドがあるし、レッズにはレッズのプライドがある。鹿島は勝利を収めて優勝を待つ、レッズは優勝は断念したものの、この試合結果如何では上位もある、という立場だった。

前半は立場の違いが現れたように思う。前半0−2は受け入れがたいスコアだった。レッズの力が足りないからだが、相手の攻撃を受けきることができない。全盛期のジュビロのように前半は相手を受け止めつつも決定機は作らせず、後半に勝負をかける、というようなプレーの成熟度が足りない。あるいは、一つ一つのプレーの判断がまだまだ物足りない。つなぐという行為とセーフティーという行為を結びつけることはなかなか難しい。失点シーンはそれが出た格好だった。

後半、ボールに効果的にからめることができなかった山瀬に代えて永井を投入。これは実に効果的な交代だった。鹿島のフォーメーションは4−4−2であり、レッズのフォーメーションは3−5−2である。鹿島の二人のセンターバックがエメと達也をケアし、両サイドバックボランチ二人がサポートに回る。ボランチの一人は山瀬をマークする。すると、局面において、FW一人について二人以上のカバーが入ることになる。中盤ではレッズが数的優位を作れるものの、フィニッシュの場面で数的優位を作れないことになる。それが前半得点を奪えない理由だった。永井を投入したことにより、最終局面で鹿島ディフェンスは数的優位を作りにくい状況になった。レッズのFWはスピードに秀でているので、数的優位がなくなると、実際的な優位性は鹿島になくなるからだ。すなわち、最終局面で鹿島のセンターバックは二人で三人をケアすることになる。第3のFWをマークするのは自然と両サイドバックになり、両サイドバックのどちらかは守備的にならざるをえない。レッズのウイングバックの前にスペースが生まれ、サイドアタックのチャンスが増える。その結果が永井のゴールを生んだ。左サイドでボールをもった達也からのクロスをエメが反応し、そのこぼれ球を永井が押し込む。鹿島右サイドバックが達也をケアする。センターに位置するエメには秋田、永井はやや右によって大岩の視界から消える。両ボランチは平川、長谷部、暢久の中央突破を防ぐためにやすやすと最終ラインをケアすることができない。2点目も同様だ。永井のクロスにエメが反応し、ヘッドでゴールネットを揺らした。一人の交代で試合を変える、見事な交代劇だった。

引き分けという結果は受け入れるべきで、鹿島の優勝を阻止したという結果には一定の満足はあるのだが、個人的には物足りなさを感じた。試合の入り方が前半2失点につながったと思うし、相手の勢い、気迫に負けてしまったことが残念でならない。タラレバはなしだが、前半0−0に抑えることができていれば、ナビスコファイナルの再現はありえたと思う。ゲームに望む際のメンタリティの未熟さが来季の課題となるだろう。オフトはシーズン中に「前半は寝ていた」とよく言ったが、この試合もそうだった。シーズンを通して波があるのは当然であるが、その波をどれだけ小さくするかがメンタリティにかかわってくると思う。勝利した試合や好ゲームは開始早々から積極的に前へ出るサッカーができ、試合への集中力が高かった。負けた試合は、キックオフしても、ほわんと集中力を欠いた入り方をしていた。
 
天皇杯は一発勝負であり、初戦は2試合戦ってきたチーム。メンタリティで負けるなら、昨年の再現もありうるだろう。気持ちを切り替えて、元旦にプレーすることを期待したい。