ナビスコカップ優勝

栄光の11.3からはや10日が経った。その間にファイナル4も1試合消化し、リーグ戦でも首位に立った。

1週間が経過しても、あの感動は色あせることはない。逆にあの感動が自信につながっている。王者の風格すらただよう、というと言い過ぎか。近年、Jリーグを支配してきた鹿島を決勝という晴れ舞台で4−0というスコアで粉砕した。たとえ、ベストメンバーが組めなくても狡猾な試合運びをする鹿島を破った。

開始早々の幻のゴールで試合の趨勢はレッズに傾く。判定はオフサイドだったものの、FWとMFの連携がスムーズにいった。相手DFをパスワークとスピードで振り切れる、そして、リーグでみせてきた破壊的ゴールラッシュの予兆を感じさせた。先制点は山瀬のゴールだったが、これも達也、エメ、山瀬のコンビネーションプレーから生まれた。開始13分のゴールは理想的だった。いくら堅守を誇る鹿島といえど、勝つしかない状況で攻撃的にならないことはない。鹿島が攻める体勢になれば、レッズが使うスペースは拡大する。スペースがあれば、レッズの攻撃はより強さを増す。

1点とられてから、鹿島のペースへと流れは変わるが、これもまた仕方がないところだろう。90分、決勝という舞台、老練な鹿島を攻めつづけることはできない。鹿島の攻撃をしっかり受け止め、ゴールをわらせず、流れが変わるのをじっくり待つ。受け手になっても攻撃の精神は忘れない。エメと坪井が交錯し、ケガで一時退場したときが一番の危機だった。坪井が抜けても、内舘が最終ラインに入り、前からの守備を徹底させ、無失点に抑えた。このとき、リーグ戦で内舘が最終ラインに入るパターンを数試合こなしていた経験が生きた。順応性、集中力が問われたシーンだったが、あわてることなく、すばらしき守備をみせてくれた。

後半のキックオフの瞬間、不意に涙腺がゆるんだ。前半の内容がよみがえり、もはや点を失うことはないし、追加点が奪え、戴冠できる、そんな情景が頭をよぎり、勝利を確信した。苦節11年。初めてタイトルがもたらされる。まちにまったタイトル。その瞬間が目の前にある。それが涙腺をゆるませる理由だった。

キックオフの笛で目が覚め、自分のなかではっきり勝利の情景がさだまると、後半は安心してみることができた。勝利が見えたとしても、そこになんら気負いや緊張はない。たんたんとプレーするのみ。平常心で戦えば、結果がついてくる。そう、リーグ戦での経験が、そして、昨年の残像がチームを成長させた。後半開始早々のエメのゴール。これで2点差。エメのワールドクラスのゴールで相手の戦意をそぐ。これでほぼ試合は決まった。直後の達也のゴールで3点差。相手のとどめをさすような豪快なゴールだった。3点は致命的だ。だれもが勝利を確信した瞬間だった。この直後に小笠原が退場。鹿島にゴールを奪うすべがなくなった時間だった。

長いようで、短いような、1年だった。昨年、連敗の端緒をひらいたのが鹿島だった。リーグ戦のアウェーで惜敗し、なにも分からないまま試合に負けた決勝。局面でレッズに立ちはだかった鹿島。その鹿島に完璧に粉砕した。粉砕した結果がナビスコカップ優勝。なんともいえぬめぐり合わせだ。そして、リーグ最終戦も鹿島ときた。いつか忘れたか、鹿島の優勝を決めた試合がレッズだった。そう、鹿島をもう一度唖然とさせる場面が巡ってきた。この試合はリーグ戦であり、埼玉スタジアムで行なわれる。すでにチケットは完売と言われている。私は、埼スタセット券だからチケットの心配はない。ナビスコは目の前でチケットがなくなった。わずか10分足らずで完売したのだ。国立に行けなかった分、リーグ戦の優勝をこの目で目撃したい。