ナビスコカップ準決勝 レビュー

平日のナイトゲーム、しかもカップ戦に、駒場をほぼ埋め尽くした。リーグ戦なみの熱気があり、いや、直接決勝進出がかかっているだけにその熱気はリーグ戦を上回っていたかもしれない。私もその駒場へと足を運んだが、いつもよりも高ぶるものを体内に感じた。
 
10月4日のセレッソ戦に行ったときに、駒場の場内に「紙ふぶきの用意をお願いします」という掲示があった。当日の午前中に紙ふぶきを用意したが、まさか6点も入るとは思わなかったので、2点分の紙ふぶきしか用意していなかった。なにゆえ2点かといえば、前週のファーストレグに0−1で負けていたからだ。決勝に行くには最低2−0でこの試合を終えなければならない。ホームなら2点は必ず決めてくれる、という期待、いや自信すら感じていた。われわれ見る者はなにをすべきか。選手を鼓舞し、決勝に進むためのエネルギーを選手に注入することだ。この試合こそ、レッズがさらなる飛躍を迎えるための試金石であった。
 
ファーストレグで味わった勝利への難しさ。一つのミスが決定的な敗戦を導く恐ろしさ。これらを克服してこそ、チャンピオンにふさわしいチームとなりうるのではなかろうか。昨年の準決勝は一発勝負だった。ことしはホーム&アウェーの2試合がある。しかも、負けているとはいえ、ホームでセカンドレグを戦える。無論、ファーストレグを最低でも引き分ければよかったのだが、終わったことは言うまい。ミスを犯した都築も、汚名返上のプレーをしてくれるはずだ。もはや赤い壁の一員として信頼をうけているニキフォロフ不在も勝利への執念で克服してくれるにちがいない。攻撃には各世代の代表がいる。旬の達也もいる。スターティングメンバーに名を連ねるだけで相手を震撼させるJ屈指のツートップがいる。
 
ファーストレグで1−0と優位に立った清水は、この試合負けなければよいから、守備的にくることが予想された。ファーストレグで両サイドを支配したアレックス、鶴見もいる。しかし、予想はくつがえされた。清水は予想よりも引いてこなかったように見えた。エメと達也のツートップに恐れをなしたのか。まあ、これはレッズ的視点だが、前目からプレスをかけて中盤を支配し、攻撃的な両サイドを活かす清水のスタイルかもしれない。レッズの攻撃を防ぐにはフォワードにスペースを与えなければよい。事実、リーグ戦でもスペースがなければ相当苦戦してきた。セカンドステージでも引き分けた京都、カウンターに沈んだマリノス戦。こういったことが戦前に頭をよぎったのも事実だ。
 
レッズはキックオフから今まで以上の集中力を見せ、勝利へのあくなき執念をみせつけた。右サイドは暢久が、左サイドは平川が果敢に攻め、サイドを支配した。サイドが支配できれば、攻撃に数がかけられるから、数的にも、ボールも支配できる。守備においても、両サイドは献身的なプレーをみせた。ニキ不在のため、内舘が最終ラインに入り、内舘の位置に長谷部が入った。長谷部は今年もっとも成長したプレイヤーの一人だ。ボランチの位置から攻撃の拠点となる。ボールをちらして、攻撃のリズムを作る。名波のようなプレーができるようになってきた。今年の前半は消えるシーンが見られたが、シーズンを追うにつれ、その存在感を増してきている。U-20でも十分レギュラーを張れる存在だが、チーム優先を貫き、トップチームに欠かせない選手となっている。
 
達也の2点目のゴールで、ほぼ勝利を確信した。前半終了間際のゴールで、相手に精神的ダメージを与えた。後半も攻められるシーンはあったものの、ファーストレグの汚名を返上する都築のファインセーブで堅守を誇った。後半も集中力が途切れることなく、果敢に攻め、4回ゴールネットをゆらした。エメはハットトリックを達成。昨年の準決勝もハットトリックで決勝に導いた。都築がアンジョンファンへのファールで退場になったものの(あれはアンのシミュレーションだ)、交代した山岸もブランクを感じさせず、高い集中力を見せ、PKの1失点に抑えた。
 
0−1で、決勝を賭けた一戦に臨むという難しい状況のなかで、勝利をもぎとったことは、おおいなる自信をチームに与えた。キックオフから高い集中力、勝利への執念を見せた。苦境にたたせられようとも、それを克服できる精神状態を得た。贔屓目ながらも、チャンピオンになってもおかしくないチームに成長した。昨年来から守備は磐石となり、堅守速攻もチームの一形態として定着した。相手がマンツーマンでフォワードを止めようとしても、それを振り切ってシュートまで持ち込めるまでにフォワードが成長した。レッズのフォワードを止めるには反則を犯すしか方法がない状態まで到達してきている。両サイドからの攻撃、山瀬・長谷部からの中央からの攻撃、エメ・達也・山瀬が変幻自在にポジションをとり、相手守備陣を混乱させる。全方位からの攻撃を可能にするまでになっている。オフトが1年半かけて地道にチームを作ってきた成果でもある。その一つの結実としてナビスコのタイトルがもたらされよう。苦手とする鹿島でも、おそるるに足らず。ナビスコの栄光を奪取できれば、リーグ戦も天皇杯も見えてくる。