日本代表 ヨーロッパ遠征 雑感

今回は、アウェーで戦い、経験を積むことが重要な点であったように思われる。ヨーロッパでやることで、ヨーロッパでプレーする選手を招集しやすくし、そのコンビネーションを深めることも重要であった。
 
印象としては、これら2試合はあまり記憶に残らないゲームだった。たいていは3日空いても、試合の残像は残っているが、その内容を思い出すことははなはだ困難になっている。チュニジア戦はメンバーからしてもテストの意味合いが濃いが、ルーマニア戦はさして重要な経験を積んだとは思われない。収穫としては、中沢のパフォーマンスの高さだけだ。チュニジア戦のメンバー、特に守備陣では不安の要素の方が大きい。三浦淳のパフォーマンスもアレックスを上回るものであったが、おそらくジーコはアレックスをメインに使うのであろう。
 
当初この遠征は、日本でナビスコカップの準決勝があることで、準決勝に進出したチームから召集がない、とされた。しかし、蓋を開けてみれば、レッズと清水から合計3人招集された。この3人はルーマニア戦のみだが、チュニジア戦の守備の陣容は驚きと発見であった。中沢は妥当としても、右サイドの加地には驚きだった。中沢のパフォーマンスの高さは知られるところであるが、この遠征を通じて代表でもレギュラーを獲得できるだけのパフォーマンスを見せた。中沢のための遠征であったといっても過言ではあるまい。加地の恐れをしらぬプレーぶりは新鮮だったが、いかんせん守備には不安が残った。なぜ、加地が新鮮に映るのかといえば、暢久とアレックスの場合、暢久の攻撃参加が少ないからだ。しかし、ルーマニア戦で完全に明らかになったように、アレックスの守備が不安定だけに暢久が単に上がれないだけだ。4バックであるにもかからわらず、擬似3バックになる。ルーマニア戦の場合、最終ラインが暢久、坪井、中沢で守備をしていた。アレックスの裏のスペースを支配され、4バックが一つずつ左にずれる形となる。アレックスに守備の信頼性がないため、4バックの前にいるボランチも守備に忙殺される。そのため、攻撃が左によりすぎることになる。三浦淳ならアレックスよりも守備の計算ができる。もともと中盤の攻撃的選手であるから、攻撃面でも期待ができるし、チュニジア戦では問題なくこなした。個人的にはアレックスは中盤の控えでよいと思う。左サイドは、選出されていないがFC東京の金沢も守備が計算できる選手だ。
 
チュニジア戦はナビスコカップ準決勝と重なって、テスト色の濃いゲームとなったが、ナビスコと重ならなければ、おそらく従来と同じメンバーで試合をしたであろう。不安なのは、選手を固定して使いつづけていることだ。ワールドカップアジア予選は集中開催方式ではなく、2年をかけてホーム・アンド・アウェーで出場国を決定する。短期決戦なら、メンバーを固定して戦うのも一理であろうが、長期の場合、予選の間にリーグ戦も行なわれる。リーグ戦をこなしつつ、予選も戦うとなると、予定していた選手が常にピッチに立てるとは限らない。そのためにはチーム全体で成熟する必要があろう。どの選手が出ても、同じ緊張度で戦うことが重要となってくる。ルーマニア戦後の藤田のコメントをふまえれば、サブのメンバーのモチベーションが心配だ。海外組の召集が難しいとされる東アジア選手権では、国内組で構成されると思われるが、その時になって初めて使われる選手もでてくるはずだ。その時になって試せばよい、という思考ではあやうい。結果的にテストが実ったチュニジア戦だが、意図してテストしたことは、ジーコになってからはない。チーム全体のコンビネーションをあげるには、実践の場で試すしかありえないだろう。目前に迫るタイトルをかけた大会への準備はカメルーン戦しかない。カメルーン戦で海外組を召集するのが難しいのであれば、思い切って、カメルーン戦を東アジア選手権テストマッチと位置付け、その準備に費やすことも必要だろう。チーム内での競争こそがチームを活性化させる最良の手段である。