日本対韓国 観戦記

東アジア選手権SARSの影響で延期し、急遽組まれたゲームだった。一月ほど前に対戦したばかりだが、その影響もなくゲームをみることができた。
今回と前回のゲームにおいて、試合前に考えうる相違点、あるいはポイントがいくつかあった。一つは、出場機会が少ない選手であるが、欧州のクラブチームに所属する選手の合流。二つ目は、五輪代表から3人選出されたこと。三つ目は会場がホームであり、ホームで負けた韓国の気合の入れ方が激変するであろう、ということ。

今回のゲームをテレビで見た限り、一つ目と二つ目は日本にとって大いにマイナスとなった。一つ目のポイントを見てみよう。所属チームで出場機会が少ないということは、それだけゲームから離れることになる。先に行なわれたパラグアイ戦の川口のプレーを見ればわかる。チームでレギュラーと同じ練習をし、同じ状態を保つ努力をしているが、いざ試合に出ると、試合中の流れに体の感覚が追いつかず、持ち前のプレーができない。鈴木も稲本も見せ場がほとんど作れなかった。韓国の試合運びも影響があっただろうが、調子の良い稲本の場合、攻守の切替や流れの判断力に優れているが、今回は今ひとつ低調であった。昨年のワールドカップ前とワールドカップ期間中の稲本をみているようであった。今回、ゲームを体感したことで、勘が戻り、おそらく、コンフェデレーションズカップにピークを迎えるにちがないだろう。鈴木も韓国の激しいプレスに戸惑い、攻撃の起点を作り出すことができなかった。韓国のプレスを避けるようにサイドに流れたのでは、トップにボールを預けることができず、鈴木の役割が果たせない。

三つ目は、前回ロスタイムに永井のゴールによって劇的な敗戦を喫した韓国の猛攻である。前半は日本の守備ラインが高めに設定され、中盤でボール支配が少なくなり、サイドへの展開も少なかった。後半早々から、ユ・サンチョルを中心に攻撃全開となり、日本の守備ラインがずるずると下がるような状況を生み出した。日本の守備ラインが下がることで、攻撃陣が前を向いてボールをコントロールでき、サイドを効果的に生かすことができた。つまり、4?3?3のフォーメーションを採る韓国は、攻撃に6人割くことができるようになったのだ。3人のFWが流動的なポジショニングをとり、日本の二人のセンターバックを翻弄し、それを見た日本のサイドバックが中央にサポートに入ることで、サイドにスペースができる。そのスペースを韓国の中盤の選手が埋めることで、決定機を作り出した。この試合の唯一のゴールは日本のミスから始まったものだが、日本の守備が中央に集まることで、サイドを起点とした攻撃が実を結んだものだ。
 
韓国の良い点は、日本の悪い点になる。稲本の不調から、日本の攻撃は効果的なプレーをすることができなかった。もちろん、稲本一人に責任があるわけではない。韓国のプレーもよかったことも理由には挙げられよう。ただ、サイドを突破する場面がほとんど見られなかったことで、決定的なチャンスを作り出すことができなかった。どのフォーメーションを採用しようが、サイド攻撃は基本中の基本である。名良橋がソル・ギヒョンのマークに釣られたとしても、逆サイドの服部がサイドを突破、あるいは、アレックスを追い越して攻撃参加する、というシーンがほとんどなかった。アレックスは左サイドに張りついていることが多かったから、事実上、攻撃をコントロールできたのは小笠原だけである。鈴木がサイドに流れ、アレックスも左サイドに流れる。中央には中山しかいない。かといってサイドに活路を見出そうとしても、期待の名良橋も上がれず、服部もアレックスを追い越すことができない。すると、小笠原がボールをもらっても、中央で孤立するシーンがみられ、韓国のプレスによってバックパスをする場面があった。これでは決定機は作れない。

二つ目はやや試合内容とあまり相関がなさそうだが、大久保が代表デビューしたことで、今後、五輪代表にもA代表への道が生まれたことは重要であろう。今回選出された3人はJリーグで結果を残している選手である。ジーコJリーグで結果を残す選手を選出しているので、今回もそれに該当するのであろう。大久保はあまり持ち前のプレーを発揮することはかなわなかったが、終盤の永井から大久保へのクロスに対する反応が唯一の見せ場だったかもしれない。あの場面でパスの出し手が永井ではなく、他の選手であったなら、永井と大久保で2対1の状況を生み出せたかもしれない。

今回のゲームでは、韓国のプレスが早いために、パスをつなごうにもつながる場面が少なかった。ひょっとしたら、今回のような試合にはドリブルを得意とする選手がいると少しは違ったかもしれない。先発メンバーにはドリブルで勝負を仕掛ける選手はアレックスしかいなかった。控えには、永井と山田、大久保がドリブルで仕掛ける選手である。山田のドリブル突破力を試しても良かったのではないか。名良橋はほとんど守備に追われ、攻撃にからむ場面が少なかった。攻撃を作り出せる山田が入れば、少しは違った形になったかもしれない。

このあとは、キリンカップでアルゼンチン、パラグアイと戦い、6月後半からコンフェデ杯である。キリンカップから欧州組が加わり、コンビネーションを調整しながら、フランスにのりこむというプランになりそうだ。