日本対ジャマイカ 観戦記

ジーコが日本代表監督に就任し、2006年のワールドカップドイツ大会へむけて、ジーコ・ジャパンが出航した。昨日はその船出となる試合となった。ただ、就任して初めての試合ということもあり、まだまだ詳細は明確ではない。
 
選手選考は無難なものであった。ジーコが選手時代あるいは鹿島で採用してきた4−4−2のフォーメーションに基づき、それぞれのポジションに2名ずつ選ばれた。MFは海外で活躍する4人で構成。選ばれた4人は元来攻撃的であるが、所属チームでボランチでプレーする小野と稲本が守備的になると予想された。FWにはワールドカップを肺血栓で断念せざるをえなかった高原が復帰。その後の活躍をみれば選ばれるのは当然だ。Jリーグ(J1)で活躍する選手を選ぶというジーコの基準からすれば、柳沢が選ばれたのはやや不可解であるものの、そのポテンシャルで選んだというのが妥当な見方だろうか。鈴木にしても然り。所属チームではほとんど出場機会を与えられず、出場しても元来のFWではなくサイドで出場している。DFはCB2枚と両サイドバックを1枚ずつ。CBには秋田と松田、右サイドバックには名良橋、左サイドバックには服部が予想された。宮本欠場の報に坪井が選ばれるかと思ったが、小村になったのは残念だ。新顔は強いていうなら山田暢久ぐらいか。人選は妥当と思われるものの、うがった見方をすれば、負けたくないというマイナス思考で選択したように見うけられる。まあ、初戦であるから、このような人選に落ちつくのは仕方がないところ。アルゼンチン戦も同様の選考になると思われるので、来年以降、どれだけ若手、未知数の選手を試せるか、が課題となるだろう。
 
試合といえば、まずまずの出来だったのではないか。早い時間帯で先制し、ほぼ日本が主導権を握るゲーム展開。小野の先制ゴールは美しかった。ヒデがボールを持った瞬間に、高原と小野が走りだし、高原から小野へのラストパス。小野があの位置にいることが驚きだった。フェイエノールトのゲームはあまり見たことがないので、代表あるいはレッズのときの印象しかない。今季の小野はゴールを狙うという情報は聞いているが、あの動きはまさにゴールを狙う動きだった。得点の嗅覚がみがかれたのだろうか。
 
中盤の4人のコンビネーションはまずまずではなかったか。ポジションチェンジも柔軟にこなし、ほぼミスはみられなかった。ヒデも余裕があったのか、楽しそうにプレーしていた。中村の出来もまずまず。ただ、攻撃陣がスピードアップする場面でボールを持ち過ぎたり、左足でパスを出すのを読まれてパスするタイミングを逸している場面も見られた。時折右足でパスする場面も見られたが、いかんせん左足に固執するため、相手DFのマークは楽だったのではないか。その点、小野もヒデも両足が使えるので、相手に読まれる場面は少なかったと思う。
 
DF陣をみると、いかんせんスピードが足りない。ジャマイカにスピードがある選手が多いというのもあるが、あっさりかわされるシーンも見られた。1対1の場面でも距離をおかれるとかわされてしまう。意思疎通を図る時間がなかったとはいえ、ちょっとあっさりやられる場面があったのはいただけない。このままだと1ヶ月後のアルゼンチン戦が不安でならない。
 
やや辛口で記述しているが、期待のあらわれであるのだ。黄金の中盤と言われている(自分はあまりこういう表現は支持しないが)4人が織り成す攻撃のハーモニーは非常に魅力的だ。魅力的ゆえに、そのほかの部分を見落としがちになる。特に守備陣。結果として引き分けに終わったが、それは相手がジャマイカだからだ。アルゼンチンなら惨敗を喫しているところだ。得点が欲しい、追加点が欲しいときにとれるだけの成熟度を求めるのはまだ時期尚早か。幾度も述べてしまうが、まだ始まったばかり。トルシエもベテランの選定作業から始めた。1試合こなしたことでアルゼンチン戦の見方もややはっきりするのではないか。フォーメーションの変更はないと思われるが、海外組の召集も厳しいので、トルシエ同様苦戦は免れない。昨年の同時期イタリアと引き分けたが、今回には昨年のような勢いはなく、昨日の試合では次につながる流れがやや足りない気がする。敗戦必至は仕方がないところだが、勝ちへの執念をみせてほしい。