日本対ホンジュラス 観戦記

ようやく理想の試合ができた、というのがこの試合をみての感想だ。非常によいシュミレーションができたと思う。ホンジュラスが気持ちの入った試合をしてくれたおかげだ。どうしても親善試合になると、戦う気持ちがうすれる。ロシア代表がよい例だろう。隣国のエストニアに負けるが、アウェイのフランスでは堂々の引き分け。相手によって戦意が変動することを示した一連の流れだ。ホンジュラス陣営の試合後のコメントには自ら実験台になったというものもあり、感謝の念を禁じえない。
 
試合は、といえば、フラット3の弱点をさらけ出した格好だ。フラット3は、一見すると、最終ラインの押し上げで守備をするように見えるが、実は、前線から中盤にかけての守備が問われる。前線からの早いチェックで相手をつぶしてゆく、というものだ。相手の中盤からディフェンスラインの裏をつくFWの動きに対しては、オフサイドを意識的にとるラインコントロールで処理することができるが、FWのポストプレー、シャドウプレーで、2列目からの飛び出しに対しては何ら効果を持たないことがこの試合で証明された。
 
2列目からの飛び出しに対応するには、ディフェンスラインをフラットではなく、リベロあるいはスイーパーを設けることで対応できる。その点、ディフェンスラインが3人だとどうしても数的優位をつくれない。4バックで二人のセンターバックがいる状況になれば、数的優位を作り出し、2列目からの飛び出しにも対処できる。したがって、相手がFWや中盤からのコンビネーションで崩してくる場合、フラット3を崩してまでも4バックのディフェンスラインを形成する臨機応変な対応が求められる。監督の指示ではなく、選手間の対応が求められるのだ。3−5−2のフォーメーションでは、両サイドはMFとなるが、実際にそこに位置する選手は、日本の場合、守備に長けた選手が入ることができる。右なら波戸、左なら服部だ。センターバックに関しても、リベロやスイーパーの役割を担える選手でないと苦しい。宮本はラインコントロールで勝負する選手であるから、今回のように2列目からの積極的な攻撃参加型のチームに対しては、苦しい面を出してしまう。
 
今回の失点がすべてディフェンスによる責任ではないことは自明である。既に述べたように、フラット3による守備は前線、中盤からの守備がカギとなる。中盤での守備に不安があるからこそ、ディフェンスラインを突破されたといえよう。特に、攻撃型選手が多い左サイドを突破されるケースがみられた。
 
無論、デメリットばかりが目立つゲームではなかった。なによりも、とられてもとり返すことができたことがなによりの収穫であろう。トルシエが常に攻撃的な布陣をしいていたことも評価できるかもしれない。小野、中田、名波、という攻撃のキープレーヤーが不在のなかで、ホンジュラスと対等に戦えたことは日本の成長の証であろう。
 
前回指摘した、サポーターの動きだが、どうしても劣勢になるとシュンとしてしまうのが日本の応援である。負けているときにこそ、選手を鼓舞し、戦う気持ちを与えるのがサポーターの役割であろう。
 
来週から欧州遠征が始まるが、今回の試合で得たものをどう修正してくるかに注目したい。レアル戦は余興だろうが、ノルウェー戦にはほぼベストメンバーでできるから、そちらの方がワールドカップに向けて、という意味で楽しみだ。