オリンピック観戦記-サッカー篇-

シドニーオリンピックの目玉は(私にとって)柔道、サッカー、女子マラソン、野球、砲丸投げであった。これらの種目はメダルを取れるものだと戦前は思っていたし、確信をもっていた。
 
サッカーは、メキシコ以来、32年ぶりのメダルをめざした。アトランタではまさかの予選落ち。2勝していたにもかかわらず。
 
今回はアトランタと同じ2勝1敗で決勝トーナメント進出。最後はひやひやものだったが、32年ぶりの決勝トーナメントに進出できた。まことによろこばしいものだった。決勝トーナメントに進出できてはじめてメダルがみえてくる。
 
今回のオリンピック代表は史上最強の呼び声が高く、A代表よりも強いのではないかといわれてきた。私としても、A代表と比べることは別として、史上最強という文言に対しては同感できる。ただ右足のファンタジスタ小野がいないのは残念であった(レッズのサポーターとしても)。
 
決勝トーナメントはアメリカに敗れ、メダルはなくなったが、今大会は多くの土産を残した。一つは、アフリカ諸国への対策。二つ目は点が欲しいときにどのような戦術をとるのか。三つ目はワールドカップを想定して戦えたか。
 
南アフリカ戦は先制されながらも、落ち着いて逆転勝利した。ただ、前半は相手のペースで得点された。アフリカ独特のリズム、身体能力の高さ、組織的ではない自由奔放な攻撃。こうした国々とあまり戦う機会がないがゆえに、戸惑った感がある。特に、身体能力の高い相手をどう攻略するのか。これは過去中東諸国にも当てはまった問題でもあった。ワールドカップ予選、アジア大会で苦しめられたのは中東諸国であった。イラン、サウジ、クウェート。幾度となくこれらの国々には苦しめられたが、近年、克服してきたような気がする。そのかわりに浮上してきたのが、アフリカ諸国である。いくらトルシエ監督がアフリカで指揮をとり経験値の蓄積があるとはいえ、選手にはない。2002年ワールドカップを見据え、今後2年間でアフリカ諸国との対戦を多くこなし、経験値をつんでおくことが必要だ。
 
予選リーグでは選手交代で勝機を得たようだった。柳沢と本山の交代でシステムを3−5−2から3−5−1−1に変更し、攻撃的に優位にたった。この采配は過去何回かみられ、実績あるシステム変更である。ただ、アメリカ戦に限れば、できたといえるかどうか。準決勝に進むためには勝たなければならない。勝つためには点をとらなければならない。至極当然のことである。アメリカ戦は力的に五分五分であり、局面局面ではそれほど力の差を感じなかったであろう。それゆえ、点のとれないもどかしさはあった。これがワールドカップであったら。そう考えてしまう。ワールドカップのときに賭けができるか。それができる唯一のチャンスでった気がする。ワールドカップまでこういう機会はあまりないであろう。ワールドカップを見据えれば、ここでは局面を打開するために選手交代なり戦術変更なりの賭けをすべきではなかったか。また、ブラジル戦もしかりである。今大会のブラジルは決して良くなかった。体調などのファクターをみれば、日本の方が上回っていた気がする。ただ、足りなかったのはファイティングスピリットであろう。ブラジルは国家の威信をかけて戦ったのである。
 
この試合だけは落とせないという状況で、どのように点をとるのか。オリンピックは非常に重要な、そして基幹に関わる問題を提示した。このオリンピックの教訓を10月のアジアカップで生かすことができるか。