春競馬回想

1998年の春競馬は宝塚記念で幕をおろし、いよいよ夏競馬の到来である。夏競馬といえば、やはり、3歳戦が目玉である。今年の3歳馬で注目なのは父内国産馬であろう。皇帝シンボリルドルフの後継種牡馬であるトウカイテイオー、第60回日本ダービーで3強を形成したダービー馬ウイニングチケット菊花賞ビワタケヒデ、さらに、最速のスプリンターであるサクラバクシンオーや幻の3冠馬であるフジキセキなどである。昨年のメジロマックィーンや昨々年のメジロライアンなどの内国産ブームに拍車をかけそうだ。
実際にも、フジキセキ産駒のノボマーチャン新馬戦を圧勝するなど早くもブーム到来の感がある。
それに対し、依然として遺伝力を充分に発揮しているサンデーサイレンスブライアンズタイムトニービンなどの輸入種牡馬もおおいに活躍しそうだ。
3歳戦はこれぐらいにして、ここで春競馬の回想をしてみたい。
今年のG?はフェブラリーステークスで幕を開け、宝塚記念まで白熱した10レースが行われた。フェブラリーステークスは芝のG?しか優勝していないグルメフロンティアが優勝し、ダートのG?としては物足りなさが残った。一方、地方ではアブクマポーロが連勝を重ね、帝王賞の勝ちっぷりを目の当たりにすると、このフブラリーステークスの格付けが本当に正しいのか疑問である。
やはり、タラレバ論はどこにおいても同じであるが、アブクマポーロフェブラリーステークスに出走していれば、という感想をもつのは競馬ファンにはつきものであろう。
さて、今年のクラシックは西高東低を如実に表す結果となった。桜花賞3冠馬ナリタブライアンの近親であるファレノプシスオークスエリモエクセル、ダービーはスペシャルウィークが優勝と関西馬の力を改めて実感した。特に、スペシャルウィークが優勝したダービーは圧巻であった。やや重で2分25秒8はかなり優秀なタイムである。それにもまして強いと思わせたのは直線での瞬発力であった。並ぶ間もなく皐月賞セイウンスカイをかわし、2着に5馬身ちぎるとはまさにこの馬の力を存分に発揮した結果であろう。さらに、この馬の力を発揮させた武豊の騎乗も素晴らしかった。武豊の冴えた騎乗ぶりは2年ぐらい前から見られるようになったと思う。2年前といえばダンスインザダークとクラシックを目指した年である。付け加えればその年は花の13期生といわれるように福永祐一らスーパールーキーを輩出した年でもあり、この影響も武豊の騎乗を冴えさせる一因となったともいえよう。
古馬路線も長距離・短距離を問わず、素晴らしいレースであった。長距離では、昨年の冬から本格化したメジロブライトが優勝した。今年のこのレースは数年前からいわれているスローペース症候群にかかっていた。それにもかかわらず、メジロブライトは、昨年の春は後方一気で展開に左右されやすい脚質が古馬になってからは自在の脚質をみせ、スローペースの天皇賞を優勝したことはこの馬の成長力を感じさせるものがあった。
昨年の年度代表馬であるエアグルーヴ牝馬とは思えないレースを昨年に引き続きみせてくれた。内国産馬でこれほどの強さをみせる牝馬はそうはいない。数十年前のトウメイやスターロッチに匹敵する名牝であるといえるだろうし、ひょっとすると、ヒシアマゾンより強いだろう。今年の春はG?に優勝できなかったが、秋には結果を出してくれると思う。
一方、短距離路線はタイキシャトルの圧倒的な強さをまざまざと見せつけられた。昨年後半に短距離2冠を制し、年度代表馬の声も上がったが、今年のタイキシャトルはそれをも上回る強さであった。今年の安田記念は不良馬場で行われたが、このレースに優勝したことで、日本に居る存在意義を一蹴してしまう強さであった。この夏フランスへ遠征するが、是非とも活躍して日本へ帰ってきてほしいと思うのは日本のホースマンの願いであろう。
最後に、宝塚記念であるが、このレースは中距離界のニュースターが誕生した。鞍乗が武に変わってから、さらに、古馬になってから、この馬は本格化したと思われる。中山記念で優勝してからこの馬の本格化はみられるようになった。この馬は強いと思わせたのが金鯱賞であった。日本レコードに迫るタイムであったが、タイムだけでなく、テンのスピードとしまいの脚のキレが目立つレースであった。近いところでいくと、ミホノブルボンのような強さを感じた。この馬は秋の中距離路線の中軸を担える存在であると思う。
簡単であるが、これで私の春競馬回想として筆を置きたい。