最終節へ向けて

清水と名古屋に連敗したことで、優勝の可能性が消えた。残念なことであるが、この連敗がチーム状態を表している。世間ではエメルソンの出場停止ばかり敗因にあげられ、その「代役」とされる永井雄一郎に標的が向かっている(「」にしたのは私は永井を代役とは思っていないからだ。永井・エメ・達也は横一線にあると思う)。試合メンバーを元にこの2試合を振り返ってみよう。そうすれば、必然的とは言えないまでも、苦戦の原因がエメの出場停止や永井のパフォーマンスが一番の原因ではないことに気づくだろう。
 
この連敗の遠因は、セカンドステージ第3節対ビッセル神戸戦にある。この試合でDFの室井市衛が鎖骨を骨折し、途中交代した。室井の位置に内舘が入り、内舘の位置に長谷部が入った。この試合は前半から神戸を圧倒していたため、そのほころびは表面にでることはなく、神戸に2−0で完勝した。
 
第4節、第5節のDFのメンバーは、坪井・ニキフォロフ・内舘、である。第1節から第3節までのDFのメンバーは坪井・ニキフォロフ・室井である。第6節でゼリッチが復帰するまで、リベロの位置にニキフォロフが入り、坪井と室井はマンツーマンでストッパーの位置に入っていた。室井が欠場した第4節、第5節と連敗する。
 
第6節でゼリッチが復帰し、DFは坪井・ゼリッチニキフォロフとなる。内舘は従来のボランチに戻った。ニキフォロフが第9節で退場し、第10節は坪井・ゼリッチ・内舘となった。第6節から第9節までは3勝1分で内容も得点も完全に相手を圧倒した。第10節は苦手FC東京だったが、相手が4バックということもあり、左ストッパー内舘の前に位置する平川の奮闘で引き分けに終わる。
 
第11節柏戦は引き分けるが、ナビスコ決勝、第12節東京V戦は4点差の完勝。このときのDFは坪井・ゼリッチニキフォロフ東京V戦で、ニキフォロフが肉離れで退場となり、ニキフォロフの位置に内舘が入る。第13節と第14節のDFは坪井・ゼリッチ・内舘である。この2試合で連敗することになった。
 
この過程を追うと、いくつかの事実がうかびあがる。一つは、内舘が本来のポジションではないストッパーの位置に入ったときに敗戦している。二つ目は、敗戦の相手のフォーメーションが3−5−2である。逆に言えば、内舘がボランチの位置でプレーすれば、勝利あるいは引き分けまでの結果が出ている。中盤に人数が多くなる3−5−2では、危険の芽が多くなる。その危険の芽を摘んでいたのが内舘だった。インターセプトやボール奪取も長谷部より内舘の方が高い。長谷部は本来攻撃的MFであり、内舘は左サイドバック出身の守備のプレイヤーである背景も考慮しなければならないが。4−4−2が相手だと(たとえばFC東京戦)、中盤で数的優位が保たれ、内舘がDFに入っても、危険性は低くなる。
 
室井が鎖骨骨折、シーズン当初活躍し、サテライトで経験を積んでいた小林宏も鎖骨骨折。DFの層が薄くなり、ボランチでチームを落ち着かせ、存在感を増してきた内舘をDFにコンバートしなければならない現状がある。終盤の2連敗は、中盤における内舘の存在の重要性を示している。攻撃の起点は内舘にあったのだ。内舘が左サイドをカバーするがゆえに平川は積極的に上がれるし、右サイドは啓太がカバーしているから、暢久も攻撃的にいける。
 
幸運にも、最終節で対戦する鹿島は4−4−2のフォーメーションである。レッズが中盤の数的優位を作れる環境はある。鹿島のFWは以前より脅威はないし、ずばぬけた身体能力をもつ選手もいない。攻撃のキーマン小笠原はマンツーマン気味で啓太がつくことになろう。右サイドの名良橋は平川がカバーできるが、攻撃の機会は少ないかもしれない。すると、必然、長谷部の存在が浮上する。ボランチだが、攻撃的センスをもつ長谷部の出来がレッズの優劣を左右するかもしれない。名波のような役割を課すのは厳しいが、スピードで勝るレッズの攻撃の舵取りをしてほしい。レッズのスピードを活かすことができればナビスコ決勝の再来である。最終戦のキーマンは長谷部だ。